税務上、匿名組合に出資した金額を超える損失分配を受けた場合、法人税法上、出資を超えた部分については損金として処理することができません。(租税特別措置法67条の12)
特定組合員に該当しなければ、損失額の全額が損金算入されますが、匿名組合員は業務執行を行うことができないとされているため(商法536条3項)、匿名組合の出資者(匿名組合員)は、特定組合員に該当することになります。
一方で、会計では、匿名組合の会計基準や規則はなく、損失分配において、出資を超えた部分を費用処理することについては、問題ないものと考えられます。
実務上、この場合の会計処理としては、2通り考えられるかと思われます。
1,税務に合わせる場合
出資を超えた損失部分については、営業者に一時的に負担させて、次期以降の利益によって相殺します。
匿名組合員は、報告通りに損失を計上するだけでよく、別表調整をする必要がありません。
この方法だと、営業者(GK)の財務諸表が債務超過となってしまうことがあります。
2,会計に合わせる場合
損失を全額損失分配しますので、営業者側は、特別な処理をする必要がなくなります。
この場合、匿名組合員への報告書や通知書等に出資を超えた損失部分を明示し、匿名組合員側で別表調整等をしてもらう必要があります。
事前に、出資を超えた損失は損金算入できないことを匿名組合員に言っておかないとトラブルの原因となります。
損失分配を受ける側(匿名組合員)の仕訳としては、実務上、
or
匿名組合出資損 / 匿名組合出資金
とする場合が多いように思います。
個人的には、
匿名組合出資損 / 匿名組合出資金評価勘定
というように、評価勘定を設定して(名称は適当であればなんでもよいかと)、資産(匿名組合出資金)のマイナス項目として表示する方が、出資の毀損した金額が明確となり、わかりやすいかなとは思っていますが。
出資を超えた損失部分の処理については、通常、匿名組合契約に記載がありますので、契約に従うことにはなろうかと思います。(英文での匿名組合契約には記載がないように思います)
ちなみに、損失分配累計額が出資金額を超えていても、出資の戻しをすること自体は、法律上、差し支えないようですので、会計・税務上も問題がないものと思われます。