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適格現物出資の会計・税務処理


現物出資は、組織再編行為として、ちょくちょく見かけます。

事業の移転だと、会社分割の方が便利なので、事業の現物出資はあまり見かけることはないですが、グループ間だと、比較的簡単にできるので、意外とされることもあるんじゃないかなと。

 

税務では、適格現物出資と非適格現物出資に区分され、会計処理も別になります。

適格現物出資は、100%親子会社間となることが多いかと思います。

親会社から子会社に資産の移転や、デッド・エクイティ・スワップでよく見かけるでしょうか。

適格現物出資は、簿価で処理するだけように思われるのですが、消費税が厄介になります。

というのは、現物出資は、課税資産の譲渡に該当し(消費税法施行令212号)、「金銭以外の資産の出資により取得する株式(出資を含む)の取得の時における価額に相当する金額」(消費税法施行令4523号)となっており、現物出資により取得する株式の時価が課税標準となるためです。

つまり、消費税の計算においては、株式を時価評価しなければならないということになります。

 

出資者が、子会社株式を他の子会社に現物出資するのであれば、課税売上割合計算に影響を与えるだけで、あまりインパクトはないのですが、資産・負債を子会社に移転するということになると株式の時価の消費税分だけ損益がでてしまい、会計処理や法人税に影響を与えてしまうということになるかと考えられます。

仕訳としては、以下になるでしょうか。

 

☆出資者側

子会社株式(簿価)        / 資産・負債(簿価)

雑損失(株式の時価の消費税)   / 仮受消費税(株式の時価の消費税)

 

☆被出資者側

資産負債(簿価)         / 資本金等(簿価)

 

仮払消費税(株式の時価の消費税) / 雑収入(株式の時価の消費税)

 

 

現物出資の一番のデメリットとしては、現物出資の総額が500万円を超えてしまうと検査役による調査を受けなければならなくなることになるかと思います。検査役による調査を受けたことはないですが、費用と期間がそれなりにかかるようです(費用は数百万円、期間は数カ月とも)。ただ、これだと利用者が少なくなるだろうということで、現物出資財産について会社が定めた価額が相当であることについて弁護士、公認会計士等の証明がある場合には、検査役による調査は不要となります。(会社法20794号)

 

弊事務所でも、現物出資の評価証明書を提出させていただくこともやっておりますので、お問い合わせいただければ幸いです。