上場企業のオーナーなどが、資産管理会社を利用して、個人の配当所得に適用される税率を低くするという節税策が、2023年10月1日以降に支払いを受ける上場企業株式等にかかる配当からできなくなるようです。
もともと、どのような節税方法かというと。
「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」という制度がありまして、この制度は、持株割合3%未満の個人株主の上場株式等に係る配当等については、申告不要制度を選択でき、源泉徴収だけで課税関係が終了するという制度です。
源泉徴収の税率は20.315%になるので、取られる税金は20.315%のみということです。
一方で、持株割合3%以上の個人株主(上場企業のオーナー、創始者やその親族など)は総合課税となります。
総合課税の税率は最大55%になりますので、源泉税20.315%に比べるとだいぶ税率が高くなります。
そこで、抜け穴として、資産管理会社(いわゆるペーパーカンパニー)を作って、資産管理会社に株式を持たせることによって、個人の持株割合を3%未満まで減らし、税率の低い源泉税のみで課税するという方法です。
今回の税制改正により、個人株主が所有する上場株式等と同族会社が保有する上場株式等を合算して、持株割合が3%以上の場合、選択の余地を与えず、個人株主の課税方式が総合課税(最大税率55%)となるようです。
改正のイメージ図が国税庁の税制改正の解説にありましたので、参考に貼っておきます。
高額納税者ほど、税率が低くなる傾向があり、「1億円の壁」ともいわれています。
「1億円の壁」とは、所得税の負担率が所得1億円をピークに下がる現象なのですが、日本の税制(所得税)は、所得が高いと税の負担率も上がる「累進制」をとっており、所得が1億円を超えている富裕層は、税率が20.315%に固定されている金融所得を増やそうとします。
岸田先輩が資産所得倍増プランを掲げる一方で、金融所得という言葉もニュースで見かけるようになりました。
1億円を越える所得者の税負担率が減少している背景は、株式や投資信託への取り引きによって利益を出している富裕層が多く、こうした不公平感を解消するべく、今回の改正となったのかなと思われます。
本改正は、2023年10月1日以降に支払いを受ける上場企業株式等にかかる配当から適用されるので、駆け込み需要で増配する上場企業もあるかもしれませんね。