新リース会計基準「リースに関する会計基準」の概要


延期されておりました新リース会計基準が公表されまして、2027年4月1日以後の期首から適用開始になります。会計基準なので、適用対象は上場会社と会社法上の大会社(とその関連会社)になり、いわゆる中小企業は税務に従うことがほとんどかとは思いますが、まだ、税務は公表されていません。以前より、会計基準作成側も国税庁も、会計と税務は、別というスタンスなので、あんまり連携はとる必要もないんでしょうかね。こういうときは会計が先に理屈を出して、税務は、実情を考慮しながら(政治に配慮しながら)、という感じになっているような気がします。

 

ざっくり新リース基準の概要を言うと、以下になります。

1,リースの借手は、リース料を費用処理できなくなり、資産・負債計上されます。

少額リース(リース契約1件当たり300万円以下)と短期リース(リース期間が12カ月以内)は、従前通り、費用処理を認めるようです(リース適用指針第20項、22項、BC43項)ただし、リース期間については、延長する期間を考慮しなければならなくなりますので、短期リースに該当するかどうかの検討が必要になります。

2,リースの貸手は、従来とあまり変わりませんが、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する会計処理の方法は廃止されました。また、無償賃貸期間の使用料は、契約期間等にわたり配分することになります。

3,無形固定資産のリースは対象外です。

4,借地権は減価償却対象。旧借地権は、対象外とすることもできます。(リース適用指針第27項)

5,セール・アンド・リースバック取引は、(売買取引+リース取引)or金融取引という区分となり、従来の損益の繰延処理はなくなったと考えられます。時価(譲渡対価)、市場レート(リース料)というものが登場し、適切(?)な売却損益の計上が求められることになり、非常に判断に困ることになります。(リース適用指針第57項)

6,開示(注記)が増えて、上場企業等は開示が面倒になると思います。

 

所感を言うと、

1,会計処理自体は、従前のファイナンスリース会計処理と根本的には変わらないのかなと。相違点としては、リース負債を計上し、付随費用や資産除去債務等を加減算して、使用権資産(従前のリース資産)を計上することになるので、必ずしも、使用権資産=リース負債とはならなくなります。リース期間の延長を考慮する必要があり、リース期間が見積りとなる場合があるので、いちいち見直しするのが面倒になると思います。利息相当額は、原則は利息法ですが、資産に重要性がない場合には、利息の認識は不要or定額法としています。

2,貸手は、ほぼ従前と同様なので、税務が会計と違う見解とならない限り、リースの節税商品は、ほとんど影響はないということになるかと思われます。

3,借地権など税務と相違が生じるものについては、税務の取り扱いが待たれます。

4,セール・アンド・リースバック取引は、判断がより高度化し、判別及び測定が困難になると思われます。

 

実務的な影響が大きいかなと思う点としては、

1,契約により、リースとそうでない部分に分ける必要があり、別に会計処理をしなければならなくなる。

2,実質的にリースとみなされるものについては、その判定をしないといけない。(識別のフローチャートあり。下記参照)

3,リース期間は、解約不能期間だけでなく、延長見込み期間も考慮する必要がでてきます。期間の変更があれば、資産・負債の金額を見直す必要があるので、店舗や事務所等をリースしている会社は、面倒くさそうです。

4,リース会社からリースしていれば、利息の計上額等を記載した償還表のようなものをもらって、従前通り、その表通りに会計処理すればいいかと思いますが、自分で償還表のようなものを作成しなければならないケースもでてくるケースもあると思います。(エクセルですぐに作成はできますが。リース会社が作成するものも、いかにもクセルで作りましたという表が多い気がします。)

 

リースの実務上の煩雑さは、会計が税務と相違していた場合にあるかと思いますので、税務の取り扱いが公表されたら、各ページを更新したいなと思っています。

税務は、会計のリース期間のような見積り数値を認めるのでしょうかね。

もともと税務にリースの利息という考えはないですが、どうなることか。

面倒事が増えます。。。

 

【参考】リース識別のフローチャート